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【あの名前を呼びたい】
 
 
あの部屋 最後の日
 
私のマスクに穴が開いていると
 
指差して微笑んだのは
 
出会った頃の笑顔
 
穏やかな 穏やかな 笑顔
 
 
「行ってきます」
 
いつもと変わらぬまま
 
靴を履き ドアを閉め
 
荷造りする私を見送った
 
優しすぎる背中
 
 
一度も振り向かずに
 
下っていった坂道
 
 
本当のあなたが戻ってきた日
 
私が新地へ旅立つその日
 
 
『ここにいたい』
 
一瞬よぎって首を振る
 
 
数日後 メールでくれた
 
荷物も何も無い部屋に
 
『さびしいよ』って声が聞こえて
 
手を握り締め 涙がこぼれた
 
 
あれからもうすぐ一年
 
また桜の季節がやってくるよ
 
 
今 思う
 
あなたの名前を呼びたい
 
あれから使わなくなった呼び方で
 
日常普通に呼んでいたあの呼び方で
 
ゆっくり 囁くように
 
あの名前を呼びたい
























































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