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【夢日記(私はスイマー)】
 
 
いよいよスイミング女子決勝戦である。
 
大会だというのに選手は皆、ひらひらした水着や、中にはビキニの選手までいる。
 
まるで芸能人水泳大会だ。
 
もちろん私もワンピースタイプのひらひら付き水着だ。
 
決勝のプールは円型で、底に向かって幅が狭くなっている。
 
キッチン用のボールのように。
 
 
「よーい」という声の後、「ピーッ」と笛が鳴ると同時に、
 
選手は一斉にプールへと滑り込んで言った。
 
「あ、出遅れた!」と一足遅く私も底へ向かって行くと、
 
同じように出遅れた遥か昔の親友と呼んでいた友Aが隣を滑り出した。
 
友Aは「キャーッ!負けたくない!」と叫ぶ。
 
赤地に白いドットのひらひら付きワンピース水着で。
 
 
ルールはタイムの速さを競うものではない。
 
『A−1』〜『R−10』まで区枠されており、
 
40分泳ぎ続けた後、ピタリと各々に決められた区間へ泳ぎ着くことで勝敗が決
 
まる。
 
腕に重さを感じながらも、私に与えられた『R−4』を見失わぬよう泳ぎ続ける。
 
すると、私を応援するスタッフの一人である初恋の男性K君が大声で私に叫ん
 
でいる。
 
「無理するなー!他の奴等は時間稼ぎで泳ぐのなんてやめてるぞー!」
 
斜め後ろを見ると赤地に白のドット柄水着が、
 
プール淵ギリギリの冷たいコンクリートを腹にヨチヨチ這っているのが見える。
 
もう少し余裕をもって視野を広げると、
 
プールの周りの屋台のラーメンをどこかへ運んでいるビキニの選手までいる。
 
腰を振りながら。
 
しかし私は泳ぐことをやめるわけにはいかなかった。
 
何故なら私は“スイマー”なのだから!!
 
 
何分経っただろう。
 
プールの苔にもめげず、プールの仕掛けである破れた網の中を潜りながらも、
 
『R−4』だけを考え泳ぎ続けていると、
 
「ピーッ!」笛の音。そして「終了!」という声が聞こえた。
 
その時私はまさに『R−4』に泳ぎ着いていた。いうまでも無い。
 
私は優勝したのだ。
 
嬉しいという感情よりも、この馬鹿馬鹿しい競技が終わった安堵感でいっぱいに
 
なった。
 
プールサイドから男性Kが腕を伸ばして私を引き上げてくれた。
 
スタッフのリーダーYはいつも通りの笑顔で私を迎えてくれた。
 
そう、私はリーダーYのために、Yのこの笑顔を見るためだけに、
 
今まで、ここまで頑張ってきたのだと、やっとで気付いた。
 
それなのに男性Kが私の手首をぎゅっと握っていてくれることを喜んでいる。
 
この感触は一生忘れないというくらいに。
 
その気持ちがYに気付かれたくないため、男性Kに向かって、
 
「ここまでの人生は私のほうが勝ち〜」とお茶羅家を言ってごまかした。
 
男性Kも「まだまだ途中だからなー」と笑いながら愛情を向けた。
 
そのやりとりもYは暖かく見守っていた。
 
 
赤地に白のドット水着の友Aは鼻血を出していた。水着とピッタリだ。
 
負けず嫌いなAはその姿を見せまいと私にはもう話しかけてこなかった。
 
負けたから。私なんぞに負けたから。ここまでの人生で初めて私に負けたから。
 
ここまでの人生と言っても、たかが18年しか生きていないというのに。
 
“親友”という名詞は、風に飛ばされそうなくらいペラペラな薄いものになって遠退いていった。
 
 
表彰式も終わり、優勝のトロフィーと花束と賞品の“魚”を持って、スタッフの皆と
 
電車に乗った。打ち上げでもするのだろう。
 
マネージャーU子が、びしょびしょの水着を着たままの私の体をタオルで一生懸
 
命拭いてくれている。
 
主役なんていらない人生のU子だから、本物の献身さで。
 
私はというと、優勝の喜びよりも男性Kに掴まれた腕の感触でまだ胸をドキドキ
 
させていた。
 
いつまでたっても懲りない私である。Yがそこに居るではないか!
 
 
電車がトンネルを走る。その先は暗闇で何も見えない。そもそもこの電車はどこ
 
行きなのだろう。
 
それより、私はどうやって泳いでいたのだろう。
 
クロールでもない。平泳ぎでもない。背泳ぎでもない。犬掻きでもない。
 
それよりもさて、私はどうして“スイマー”なのだろう。
























































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